まず体という土台を守る習慣を今日から始めてください
長く続けたいと願うのであれば、何よりもまず、自分の体を守る習慣を整えることから始めてください。磨いてきた技術も強い気持ちも、健やかな体があってこそ、はじめて存分に発揮できるようになります。
立ち仕事によって溜まっていく疲れは、できるだけその日のうちに抜くよう、日ごろから心がけてみてください。翌日へ持ち越さないための工夫は、十年先の自分を、思っている以上に助けてくれることになります。
腰や手首に負担のかかる姿勢になっていないかを、一度落ち着いて自分の目で確かめてみてください。作業台の高さや道具を置く位置を変えるだけでも、体にかかる負担は、驚くほど軽くなることがあります。
眠る時間を削って練習を重ねる日々は、続けているうちに、いつか必ず限界を迎えることになります。休むこともまた技術のうちなのだと考えて、眠る時間だけは、しっかり確保するようにしてください。
食事を後回しにする癖がついている方は、今日から一つだけでよいので、改めてみることをおすすめします。短い休憩の合間にも口にできるものを用意しておくだけで、一日の終わりに残る疲れ方は、はっきりと変わってきます。
手が荒れやすい仕事であるということを、どうか軽く見ないでいただきたいと、心から思っています。作業に支障が出てしまう前の段階から、帰宅後の手入れを、毎日の習慣として続けてみてください。
体調を崩してしまったときには、遠慮することなく休むと、あらかじめ自分の中で決めておいてください。無理を押して続けた結果、かえって長く現場を離れることになった例は、決して少なくありません。
折を見て自分の体の状態を確かめる機会を、日々の暮らしの中に、意識して組み込んでみてください。忙しさを理由にして先延ばしにしてしまうと、後になってから取り返すことが、いっそう難しくなってしまいます。
自分の体を守るということは、決して自分ひとりだけの問題ではないと、どうか考えてみてください。長く働き続けられる人がそこにいることは、店にとっても仲間にとっても、大きな力になっていきます。
体という土台がしっかり整っていれば、技術を積み上げるための時間を、長く確保できるようになります。まずはこの一つ目の土台のところから、焦ることなく、順を追って整えていっていただきたいと思います。
気持ちの置きどころという二つ目の土台を整えてください
技術の伸びが止まってしまったように感じる時期は、この仕事を続けていれば誰のもとにも必ず訪れます。そのときに自分を責めすぎないための置きどころを、できるだけ早い段階で、用意しておいていただきたいと思います。
比べるべき相手を、周りにいる誰かではなく、半年前や一年前の自分へと置き換えてみてください。以前はできなかったことを一つずつ数えていくと、自分が歩いてきた道のりが、はっきりと見えるようになってきます。
うまくいかない日というものは、原因を探りはじめる前に、いったん手を止めてゆっくり休んでください。疲れきった頭で考えた原因は、たいていの場合、見当違いの方向を向いているものだと考えてください。
失敗した日の記憶だけを持ち帰ってしまわないよう、その日に良かった点も一つ書き留めてください。そうして積み上がっていった記録は、自分を見失いそうになった日に、確かな支えになってくれます。
誰かに認められることばかりを目標に置いてしまうと、気持ちは思いのほか揺れやすくなってしまいます。自分自身が納得できる基準を、ほかの誰でもない自分の中に、きちんと持つようにしてみてください。
仕事からいったん離れて過ごす時間を、どうか意識して確保して、自分のためだけに使ってみてください。まったく別の世界に触れる経験は、思いもよらない発想を、厨房のほうへ運んできてくれるものです。
誰かに話を聞いてもらう機会は、待っていても訪れないため、自分のほうから作ってみてください。胸の内を言葉にして外へ出すだけでも、抱え込んでいたものは、思いのほか軽くなっていくものです。
目の前にある一日を丁寧に終えるということだけに、しばらくのあいだ意識を向けてみてください。遠い将来のことを思い悩んでいるときよりも、手元には確かな手応えが、しっかりと残っていくはずです。
続けられなくなってしまう理由の多くは、技術の側ではなく、気持ちの側にあると言われています。だからこそこの二つ目の土台を、どうか軽く見ることなく、丁寧に扱っていただきたいと願っています。
気持ちの置きどころが整ってくると、同じ作業をしていても、見え方そのものが確かに変わってきます。楽しさを取り戻すための仕組みを、あらかじめ自分の中に、きちんと用意しておくようにしてください。
学び続ける仕組みという三つ目の土台を作ってください
技術というものは、学ぶ手を止めた時点から、少しずつ古びはじめるものだと考えておいてください。学び続けるための仕組みを、意志の力だけに頼らない形で、きちんと作っておいていただきたいと思います。
一月に一度は新しい品を一つ作るということを、あらかじめ自分の中で、先に決めてしまってください。先に決めてしまっておくと、日々の忙しさに流されることなく、自然と手が動くようになっていきます。
書物や講習で得た知識は、その日のうちに一つだけでよいので、実際に試してみるようにしてください。実際に試したという記録が、そのまま次の学びへ向かうための、たしかな入口になってくれるはずです。
店の外の世界を見る機会を、一年のうちに何度かは、必ず作るようにしていただきたいと思います。同じ場所にとどまり続けているだけでは、自分の中にある基準が、いつのまにか固まってしまいます。
専門学校のような学びの場で改めて学び直すという道は、いくつになったとしても開かれています。学び直すことに遅すぎるということはありませんので、気になったときには、迷わず調べてみていただきたいと思います。
記録を残すという習慣だけは、どうか今日この日から、迷わず始めてみていただきたいと思います。作った品と気づいたことを一行だけ残しておくと、その積み重ねが、後になって必ず生きてくることになります。
心に浮かんだ疑問を、そのまま流してしまわないよう、日ごろから気をつけていただきたいと思います。なぜそうなるのかと思った点を、その日のうちに調べる習慣が、後になって大きな差を生んでいきます。
学んだことを一人で抱え込まずに、周りにいる仲間と、できるだけ気軽に分け合ってみてください。互いに教え合うことのできる関係は、双方の成長する速さを、確かな形で押し上げてくれるものです。
学んだことの成果をすぐに求めようとせず、静かに待つ姿勢を、しっかり持っていただきたいと思います。積み重ねてきた分というものは、思いもよらない場面で、まとめて表に現れてくることが多いのです。
学び続ける仕組みが手元にあれば、年数を重ねれば重ねるほど、この仕事は面白くなっていくはずです。この三つ目の土台こそが、長く続けていくための力の、ちょうど中心に据えられるものだと考えています。
仲間と場をつなぐ四つ目の土台を大切に育ててください
何もかもを一人だけで背負ったまま立ち続けられる人は、実のところそれほど多くはいないものです。自分を支えてくれる人との関係を、どうか意識しながら、時間をかけて丁寧に育てていってください。
同じ時期に学んだ仲間とのつながりを、どうか途切れさせることのないよう、気にかけていただきたいと思います。互いの立場が変わっていったとしても、率直に話し合える相手というのは、何より貴重な存在になります。
ともに働いている仲間には、感謝の気持ちをその都度きちんと言葉にして、伝えるようにしてください。伝わっているはずだという思い込みは、気づかないうちに、人と人との関係を細らせてしまうものです。
材料や設備を扱っておられる方との関係も、日ごろから丁寧に築いていっていただきたいと思います。本当に困った場面で力になってくださるのは、長い時間をかけて築いてきた、そうした関係にほかなりません。
悩みを抱えてしまったときには、一人で答えを出そうと、無理をしないでいただきたいと思います。専門の窓口や信頼できる先輩のもとへ、できるだけ早い段階で、相談に足を運ぶようにしてください。
後から入ってきた人には、自分がかつて教わってきたことを、惜しむことなく渡していってください。受け取ったものを次の人へ回していく動きが、働く場そのものを、少しずつ強くしていってくれます。
記録というものは、自分のためだけでなく、働く場そのもののためにも、きちんと残しておいてください。誰かが書き残してくれた手順が一つあるだけで、次にその作業を担う人は、ずいぶん助けられることになります。
一つの店の中だけに閉じこもらず、外で開かれる集まりにも、できるだけ顔を出してみていただきたいと思います。外から向けられる視点は、自分が今どこに立っているのかを、落ち着いて教えてくれるものになります。
誰かに支えてもらった経験は、いつか別の誰かへ、きちんと返していっていただきたいと思います。そうして巡っていく関係こそが、この仕事を長く続けていくための、確かな支えになってくれます。
ここまで挙げてきた四つの土台は、どれか一つでも欠けてしまうと、全体が揺らぎやすくなってしまいます。今日この日からできることを一つ選んで、そこから順に、落ち着いて整えていっていただきたいと思います。
まとめ
長く続けたいと願うのであれば、まず自分の体を守る習慣を整えることから、始めていただきたいと心から思っています。立ち仕事の疲れをその日のうちに抜き、作業台の高さや道具の位置を見直しておけば、十年先の自分がきっと助けられることになります。
気持ちの置きどころという二つ目の土台では、比べるべき相手を周りの誰かではなく、半年前や一年前の自分へと置き換えてみてください。うまくいかない日には原因を探る前にいったん手を止め、その日に良かった点を一つ書き留めておくと、迷った日の支えになってくれます。
学び続ける仕組みという三つ目の土台は、意志の力だけに頼らない形で、あらかじめ作っておいていただきたいところです。一月に一度は新しい品を一つ作ると先に決めておけば、日々の忙しさに流されることなく、自然と手が動くようになっていきます。
専門学校のような学びの場で改めて学び直すという道は、働きはじめた後になっても、いくつになったとしても開かれています。書物や講習で得た知識をその日のうちに一つだけ試し、その記録を残しておけば、次の学びへ向かう確かな入口になってくれます。
仲間と場をつなぐ四つ目の土台では、同じ時期に学んだ仲間とのつながりを、どうか途切れさせることのないようにしてください。ともに働く仲間へ感謝を言葉にして伝え、後から入ってきた人へ自分が教わってきたことを渡していく動きが、働く場を強くしていきます。
悩みを抱え込んでしまったときには一人で答えを出そうとせず、専門の窓口や信頼できる先輩のもとへ、早い段階で相談してください。外で開かれる集まりに顔を出しておくと、自分が今どこに立っているのかを、外からの視点が落ち着いて教えてくれるようになります。
体と気持ち、学びの仕組み、そして仲間という四つの土台は、どれか一つでも欠けてしまうと全体が揺らぎやすくなってしまいます。お菓子を作る仕事を長く続けていくために、今日この日からできることを一つ選び、パティシエとしての土台を順に整えていってください。