世に出回る順位表を眺めるときに置いておきたい前提
これから製菓の道へ進もうとするとき、学校や店の順位を並べた一覧に、つい目が向いてしまうものです。順位そのものよりも、何を基準にして並べられているのかを、先に確かめておくことをおすすめします。
並び順というものは、集めた対象や数え方が変わってしまえば、まったく違う姿になって現れてきます。同じ言葉で語られていたとしても、その中身がまるで別物であることは、決して珍しいことではありません。
一覧の上位に並んでいる選択肢が、そのまま自分に合っているとは限らないという点を、まず頭に置いてみてください。合うか合わないかということは、自分自身の望みと照らし合わせて、初めて分かってくるものだからです。
順位を見ただけで安心してしまうと、自分の手で調べるという大切な手間を、そのまま省いてしまうことになります。省いてしまった分だけ、後になってから確かめ直す時間が、どこかの段階で必ず必要になってきます。
順位そのものは、まだ知らない選択肢の存在を教えてくれる入口として、確かに役に立ってくれます。大切なのは入口で立ち止まってしまわず、その先へ自分の足で、実際に運んでいくということです。
数で表しやすい要素ほど順位の一覧に載りやすく、表しにくい要素のほうはこぼれ落ちてしまいます。そこで働く人たちの空気や、かけてもらえる言葉の温かさは、一覧の上には決して現れてきません。
ある方にとっての一番が、別の方にとってはずっと下のほうに位置づくことも、しばしば起こります。順位というものは、それを見る人の事情によって、そのつど組み替わっていくものだと考えられます。
順位を作って世に出した側にも、必ずそれぞれの目的があるはずだと、いったん考えてみてください。どのような目的があったのかを想像してみると、その並びが持っている意味は、いっそう立体的に見えてきます。
順位そのものを否定する必要はまったくなく、上手に使いこなしていけばよいというだけの話です。使い方をきちんと知っている方は、限られた時間を、無駄にすることなく進んでいけるようになります。
ここからは順位そのものではなく、自分の中に順序を作っていく考え方を、順を追って並べていきたいと思います。与えられた順位を自分の手で並べ替える力こそが、進路を選び取っていくための、確かな力になってくれます。
学びの場を選ぶときに確かめる順序を並べ替える
学ぶ場所を選ぶ場面では、まず自分が何を身につけたいのかを、いちばん上に置くようにしてください。名前の知られ方や規模の大きさは、その後ろに並べておいたとしても、決して遅くはないと考えられます。
二番目に置いておきたいのは、実習の中で自分の手を動かす時間が、どれだけ確保されているかという点です。手を動かす時間の長さは、技術が身につくまでの速さに、そのまま直に関わってくることになります。
三番目に置いておきたいのは、教えてくださる方が現場をどれだけ知っているかという、その一点になります。実際の現場から生まれた話というものは、どれほど良い教科書を開いても、そこには載っていないものです。
四番目には、そこを巣立った方がどのような場で働いているのかを、置いてみることをおすすめします。進んだ先にどれだけの広がりがあるのかは、その学びの場が持つ姿を、静かに映し出しているものです。
五番目には、無理なく通い続けられるかどうかという、きわめて現実的な条件を置くようにしてください。無理を重ねた通い方というものは、学びそのものの質を、知らないうちに少しずつ削り取ってしまいます。
見る順序を自分で決めておくと、案内や説明の場に足を運んだときに、何を見るべきかがはっきりしてきます。同じだけの時間を過ごしたとしても、持ち帰ることのできる情報の質は、驚くほど変わってくるものです。
専門学校を選ぶ際には、できるかぎり自分の足で足を運び、その場の空気を確かめてみてください。紙の上に並んだ情報だけでは、どうしても分からない部分が、思いのほか数多く残ってしまうものです。
在学しておられる方や卒業生に話を聞くことができると、一覧には決して出てこない事情が見えてきます。良かった点だけでなく難しかった点についても、遠慮せずに尋ねてみると、偏りのない姿がつかめてきます。
複数の場を同じ物差しで見比べていくと、それぞれの違いが、驚くほどはっきりと浮かび上がってきます。見比べるための項目を先に決めておくやり方が、迷いを少なくするうえで、最も確実な進め方になります。
自分の手で作った順序であれば、後になって迷いが生じたときにも、立ち返るための場所になってくれます。他の誰かが作った順位というものには、残念ながらそうした働きまでは、備わっていないと考えられます。
働く場を選ぶときに優先順位をどう並べていくか
働く場を選ぶ場面においても、同じように自分の順序を作っておくと、迷いはずいぶん減っていきます。考えるべき条件の数が多い分だけ、自分の中に順序を持っておくことの力は、いっそう強く効いてきます。
いちばん上に置いておきたいのは、そこでいったい何を学べるのかという、ただ一点に尽きると考えています。働きはじめてからの数年で身についたものが、その後の歩みを、大きく左右していくことになります。
二番目には、無理を重ねずに働き続けられるかどうかという条件を、しっかり置いておいてください。そもそも続けることができなければ、そこで学ぶ機会そのものが、手元から失われていくことになります。
三番目には、丁寧に教えてくださる方がすぐ近くにいるかどうかを、置いておきたいと考えています。人が育っていくかどうかは、実のところその一点によって、大きく変わってくるものだと感じています。
四番目には、任せてもらえる範囲が年ごとにどう広がっていくのかを、置いてみることをおすすめします。先の見通しを持てているかどうかで、日々の作業が持つ意味は、まるで違ったものになってきます。
五番目には、通いやすさや暮らしにまつわる現実的な条件を、どうか忘れずに置くようにしてください。地味な要素に見えていても、長く続けられるかどうかを分ける、とても大きな要素になってくることがあります。
この順序は人によって違っていて構わず、他の誰かと同じである必要は、どこにもないと考えています。自分自身の暮らしと望みに合った並びを、時間をかけてよいので、落ち着いて作ってみてください。
一度決めた順序であっても、実際に働きはじめてみると、そのつど少しずつ変わっていくものです。順序が変わったということ自体が、自分の成長した証なのだと、前向きに受け止めてみてください。
判断に迷ってしまったときには、五年後の自分がどうありたいのかを、静かに思い浮かべてみてください。遠くにある像のほうから逆に辿っていくと、今どこを優先すべきかという順序が、自然と定まってくるものです。
お菓子に関わる仕事の形は年ごとに広がっており、選び取れる道は決して一つではなくなっています。自分なりの順序を持っている方ほど、その広がりを恐れることなく、存分に楽しんでいけるようになります。
身につける順序という序列を自分の手で組み立てる
技術を身につけていく場面にも、無理のない順序というものが、たしかに存在していると考えられます。土台のところから順に積み上げてきた方が、結局のところ最も早く、遠くまで進んでいくことになります。
いちばん最初に置いておきたいのは、正確に量り正確に温度を測るという、ごく基本的な動作になります。地味に見える作業であるほど、後になってからの伸び方を、根のところから支えてくれるものです。
二番目に置いておきたいのは、決められた手順どおりに、何度でも同じものを再現できる力になります。正しく再現できるようになって初めて、自分が変えた点の意味を、きちんと読み取れるようになります。
三番目には、なぜその工程が必要なのかを説明できるだけの理解を、しっかり置いてみてください。理由まで理解できていると、材料や気候の条件が変わった場面でも、落ち着いて対応できるようになります。
四番目には、これまで教わってきた要素を自分の手で組み立てていく力を、置くようにしてください。ここまでたどり着いて初めて、自分だけの品を考えるという段階に、足を踏み入れることができるようになります。
五番目には、人へ伝えていく力と、費用や売上といった数を扱う力の二つを、並べて置いてみてください。作ることができるというだけでは、一つの店を長く続けていくことは、どうしても難しくなるためです。
途中の順序を飛ばして進んでしまうと、後から戻ってやり直すための時間が、どこかで必ず必要になってきます。早く進みたいという気持ちが強いときこそ、決めた順序を、丁寧に守っていただきたいと思います。
自分が今どの段階のところにいるのかを、折に触れて確かめる習慣を、ぜひ持っていただきたいと思います。立っている段階がはっきり分かると、次に何をすべきかという道筋が、自然と目の前に見えてきます。
周りと自分を比べて焦る必要はまったくなく、決めた順序さえ守っていれば必ず前へ進んでいけます。歩んでいく速さというものは、人によって違っているのが、ごく当たり前のことなのだと考えてください。
これから目指そうとしている方には、他の誰かの順位ではなく、自分の順序を持ってほしいと願っています。自分の手で作り上げた順序こそが、迷いの多い道のりを、まっすぐ歩くための地図になってくれます。
まとめ
世に出回る順位表は選択肢の存在を教えてくれる入口として役に立ちますが、そこで立ち止まらずに自分の足で先へ進むことが何より大切になります。並び順は集めた対象や数え方が変われば別の姿になり、働く空気や人の温かさといった要素は、一覧の上には決して現れてこないためです。
学ぶ場所を選ぶ場面では、自分が何を身につけたいのかをいちばん上に置き、手を動かす時間の長さや教える方の現場経験を続けて並べてみてください。専門学校を選ぶ際にはできるかぎり自分の足で足を運び、在学しておられる方や卒業生から、良かった点と難しかった点の両方を聞いておきたいところです。
働く場を選ぶ場面でも、そこで何を学べるのかを最上位に置き、無理なく働き続けられる条件や教えてくださる方の存在を続けて並べていきます。順序は人によって違っていて構わず、働きはじめてから変わっていくこと自体が、自分の成長した証だと前向きに受け止めていただきたいと思います。
技術を身につける場面にも順序があり、正確に量ることから始めて再現する力、理由を説明できる理解へと積み上げていくのが確かな道になります。途中の順序を飛ばしてしまうと後から戻ってやり直す時間がどこかで必要になるため、早く進みたいときこそ決めた順序を守ってみてください。
組み立てる力まで届いた後には、人へ伝えていく力と費用や売上といった数を扱う力を並べて置いておくと、店を続けていく力へとつながっていきます。周りと自分を比べて焦る必要はまったくなく、歩んでいく速さは人によって違っているのがごく当たり前なのだと考えていただきたいと思います。
お菓子に関わる仕事の形は年ごとに広がっており、選び取れる道はもはや、一つではなくなってきているように感じられます。自分なりの順序を持っている方ほど、その広がりを恐れることなく、目の前に開かれた選択肢を存分に楽しんでいけるようになります。
これからこの道を目指そうとしている方には、誰かが作った順位ではなく、自分の手で並べ替えた順序を持っていただきたいと願っています。自分で作り上げた順序こそが、迷いの多い道のりをまっすぐ歩くための地図となり、パティシエとしての歩みを最後まで支えてくれるはずです。